第34回兵庫県透析合同研究会・第46回兵庫県透析従事者研究会 開催報告

令和5年10月22日(日) 神戸国際会議場 -144名参加-


 2023年10月22日(日)に神戸国際会議場にて、第34回兵庫県透析合同研究会、第46回兵庫県透析従事研究会が開催されました。
 第34回兵庫県透析合同研究会では、特別講演で埼玉医科大学中元秀友先生の「連携を重視した腎臓治療」として透析の歴史から始まり多職種連携と多岐にわたり講演していただきました。企業共催セミナーとして「今後の腎代替療法選択(PD・HD・腎移植~CKM)について」をテーマに東邦大学医療センター大森病院腎センター教授の酒井謙先生よりCKMを中心に講演していただきました。私自身CKMを経験する機会が無く、高齢化が進んでいる現在では、今後より多くの人がCKMを選択する可能性が考えられ、緩和ケアなどより多くの課題が生まれるのではないかと感じました。ランチョンセミナーでは「透析療法の新しい切り口~便通・腸内環境のマネジメント~」を原三信病院 腎臓内科 部長 満生浩司先生より、ご講演いただきました。透析患者は便秘になりやすく、腸内環境で問題になるのは善玉菌、中間菌、悪玉菌のバランスが大切なこと腸内pHの低下が重要なファクターになるなど解りやすく講演していただきました。
 第46回兵庫県透析従事研究会では、一般演題8演題の発表があり日頃の研究報告をしていただき質疑応答では活発な意見交換がなされました。
 新しい企画として透析従事者ディスカッションと題し「透析現場で感じる“もやもや”を倫理的に考える」をテーマに具体的に事例を掲げ日常の業務の中にある倫理的な問題に気づき、パネラーの先生方が対策や解決策についてディスカッションを行っていただきました。まず六甲アイランド甲南病院、米村朋代先生が倫理の説明を簡潔に話していただき、その後事例として透析室内でのオムツ交換対応時や穿刺者を希望する患者の訴えへの対応の中にある倫理的問題を踏まえ、パネラーの4名の先生方が経験に即して、事例への対応や思いを熱くディスカッションしていただき、司会の先生方が倫理面から考えられる最良の対応を助言しまとめて頂きました。透析室空間内では周囲に配慮し発言すること、患者自身の尊厳を大切にすること個人情報の取り扱いなど現代社会に即した対応の必要性を感じました。今回新しい取り組みであるにもかかわらず壇上に上がってくださった先生方により会場を巻き込み盛りあがったディスカッションになったと感じています、このディスカッションが日々、現場で感じていた”もやもや“の解決になったのではないかと思います。
 今後も会場の皆様とともにディスカッションができるような企画を役員一同検討してまいりたいと思います。
 当日は時間いっぱい有意義な意見交換が参加者の皆さんとともにできたことを嬉しく感じました。ご参加いただきました皆様、ありがとうございました。

 文責:松川 誠



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第47回兵庫県透析従事研究会総会・夏季セミナー 開催報告

令和5年7月9日(日) 神戸大学医学部会館シスメックスホール -105名参加-


 2023年7月9日(日)に神戸大学医学部会館シスメックスホールにて、4年ぶりに対面で第47回兵庫県透析従事研究会総会・夏季セミナーが開催されました。
 
特別講演
 特別講演では、企業共催セミナーとして扶桑薬品工業株式会社様のご協力により兵庫県立はりま姫路総合医療センター腎臓内科医長 山谷哲史 先生より「誰もが介入できる透析患者のカリウム管理~多方面からのアプローチ~」と、独立行政法人労働者健康安全機構神戸労災病院腎臓内科部長 春名克祐 先生より「バスキュラアクセス感染にともなう重症感染症」についてご講演いただきました。
 「誰もが介入できる透析患者のカリウム管理~多方面からのアプローチ~」では、高K血症と低K血症の原因と対策についてお話しいただきました。特に低K血症は高K血症と同等かそれ以上に生命予後に影響を与えるとの話は興味を持って拝聴いたしました。明日からでも現場で活用できる話が多く、改めてK管理の重要性を感じました。
 「バスキュラアクセス感染にともなう重症感染症」ではAVF・AVG・カテーテル感染の症例をご紹介いただき、その中にはシャント感染から化膿性脊椎炎に至った貴重な症例もありました。穿刺時の感染対策については、普段から穿刺に関わっている私達にとって改めて手技を考える切っ掛けになる事と思います。
 
第47回兵庫県透析従事研究会総会
 第47回兵庫県透析従事研究会総会では総会員数456名に対し、当日参加83名、委任状249名となり総会は無事成立いたしました。皆様のご協力に感謝いたします。
 今後とも役員一同、会員の皆様に役立つ講演・パネルディスカッション等を開催していく所存です、よろしくお願いいたします。
 
パネルディスカッション
 夏季セミナーでは「高齢者のQOLを考える」をテーマにしたパネルディスカッションを開催。
 高砂市民病院の臨床工学技士・管理栄養士 塩井隆也 先生からはGNRI・簡易栄養状態評価表(MNA)を使用した透析患者の栄養管理、スタッフ全員参加でのフレイル対策をご紹介いただきました。
 尼崎総合医療センターの透析看護認定看護師 石田真由 先生からは透析導入施設として「患者・家族にとって大切なこと」を中心に透析導入後の生活を考えた導入期指導をご紹介いただきました。
 宮本クリニックの医療ソーシャルワーカー 梶原佐永子 先生からは透析施設内での医療ソーシャルワーカー(MSW)の役割と、MSWを介しての高齢透析患者への多職種連携でのアプローチについてご紹介いただきました。
 しもかどクリニックの臨床工学技士 森本光士郎 先生からは血漿浸透圧コントロールが透析中の血圧に影響を与えるとして透析前半~後半にかけ段階的に血流量を上げていく方法についてご紹介いただきました。
 伊丹ゆうあいの作業療法士 三木翔太 先生からは国際生活機能分類(ICF)を使って患者の問題点を把握、ただ単にリハビリをするのではなく「できるようになって何をしたいのか」という目標が大事であるとご紹介いただきました。
 先生方にはそれぞれの職種・職場の環境から高齢者透析にいかに関わっているのか、どのような考え・体制で高齢者QOLの改善に努めているのかについて詳しくお話しいただき。パネルディスカッションにおいても活発な意見交換が行われました。
 今後各施設でも活用できる貴重なパネルディスカッションになったと思います。
 4年ぶりに総会も対面での開催となりました、セミナーやパネルディスカッションで活発に意見交換をする皆さんの真剣な表情を見ることができ大変嬉しく感じる1日となりました。ご参加いただきました皆様、ありがとうございました。
 
 文責:早栗 徹
 



[特別講演]

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[パネルディスカッション]

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第33回兵庫県透析合同研究会・第45回兵庫県透析従事者研究会 開催報告

令和4年10月23日(日) 神戸国際会議場 -153名参加-


 2022年10月23日(日)に神戸国際会議場にて、3年ぶりに対面で第33回兵庫県透析合同研究会、第45回兵庫県透析従事研究会が開催されました。
 第33回兵庫県透析合同研究会では、企業共催セミナーとして「高齢透析患者を支える地域連携」をテーマに医療法人社団星晶会統括看護部長の小島昭彦先生、岡山済生会総合病院の平松信先生よりご講演いただきました。高齢患者がCAPD治療を選択するメリット、デメリット、訪問看護などの社会資源の活用や多職種連携、患者の希望に寄り添った医療支援の重要性についてお話いただきました。中でも平松先生の調査ではCAPD患者の方がHD患者よりも認知症の発症数が少ないという報告に関心を持ちました。その要因には心血管病変への影響の違いなど様々な理由が関連しているとのことでしたが、今後の高齢化による認知症患者数の増加を考えると、高齢患者がCAPDを選択することは、適応の制約はあるものの、より患者のQOLを向上する上で意義のある選択ではないかと感じました。
 また特別講演では「シームレスな腎不全医療をめざして」をテーマに広島大学腎臓内科教授の正木崇生先生よりご講演いただきました。近年、腎硬化症による透析導入の割合が増加していることより、塩分過多による血圧上昇、腎症の進行だけでなく、その後の心血管系などの合併症への影響を考えると、保存期からの減塩が非常に重要であることをご説明いただき、日常生活支援をする看護師にとっては患者の食生活改善への支援の重要性や責任を改めて感じました。
 
 第45回兵庫県透析従事研究会では、一般演題5演題の発表がありました。質疑応答では透析患者の栄養状態を検討したうえでの透析量の見直しや、穿刺針のゲージの違いによる血流量のとらえ方、ダイアライザに残るPVPに対する考え、透析患者の水素ガス吸入の有用性、新型コロナウイルス感染症対策などについて活発な意見交換がなされました。
 「透析患者の足病変に対する取り組み」をテーマにしたパネルディスカッションでは新須磨透析クリニックの白濱久美先生、服部病院の藤本和仁先生、明石医療センターの小川宏美先生、宮本クリニックの重松武史先生よりご講演いただきました。事例をご紹介いただきながら、観察や処置などのフットケア、レオカーナや炭酸ミストを用いた治療報告、透析条件の検討、SPPの管理、足病変治療に必要な多職種連携についてなどそれぞれの施設での取り組みをご講演いただきました。下肢切断の予防のために、看護師、臨床工学技士の立場から専門的な視点で足病変発症予防や治療にできる限りの力を尽くされていることを実感し、また新しい取り組みを検討する題材をいただいたように感じました。ディスカッションではフットチェックを拒否される、リスク認識の乏しい患者など介入困難な患者への効果的な関わり方やスタッフのスキルアップのための取り組み、レオカーナの使用に関する細かな注意点などについて、40分にわたり活発な意見交換がなされ、日々、現場で感じている問題の解決の糸口となったのではないかと感じました。
 
 3年ぶりの対面での開催で、有意義な意見交換ができた空間と時間を、参加者の皆さんとともに共有できたことを大変嬉しく感じる1日となりました。ご参加いただきました皆様、ありがとうございました。
 
 文責:白石夕起子



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